【ブライトン特急・17】《Rainbow Flag》

        ブライトンはイギリスの南海岸の保養地の中でも最もロンドンから近いところなので、18世紀くらいからロンドンの人々の格好の週末の行楽地でした。また、開放的な土地柄のために、若い芸術家なども多く住んでいて、政治的にリベラルな傾向が顕著です。

         自転車専用レーンをイギリスで最初に採用したのはブライトンだとか、自然系化粧品のBody Shopやフェアトレードの一号店はブライトンにあったとかという話は少なくありません。昨年2010年の国会議員選挙でイギリスで初めて「緑の党」の議員が当選したものブライトンの選挙区です。

         こうしたリベラルな土地柄を象徴的に示しているのが夏の恒例行事(8月はじめの週末)のブライトン・プライド(Brighton Pride)で、別名Gay and Lesbian パレード。男性、女性の同性愛カップルが思いっきりおしゃれをしてパレードを繰り広げます。同性愛者ばかりではなく、夏のブライトンを楽しみたい人たちも思い思いの仮装で行列します。昨年は、頭に触覚、背中に羽をつけ、おしりにブルマーのようなものをはいて全身黄色に塗ったミツバチ軍団がいました。

         ロンドンからもたくさんの同性愛カップルがブライトンに結集します。そのため当日のブライトン特急はさながらお祭り列車で、黒づくめのゲイカップルが、あちらにもこちらにもいてなかなかインパクトがありました。また、同性愛者のシンボルでもあるRainbow Flagや 景気づけの笛などを車内で売り歩くおじさんも登場しました。

         ブライトンで行われるパレードは、海岸に沿ったメインストリート(North Roadと海岸通り(Kings Road)を中心に繰り広げられます。このキングスロードの起点に有名なパレス・ピア(Brighton Palace  Pier)があります。これは海に突き出した全長500メートルの板張りの桟橋で、船の発着のためのものではなく全体が遊園地のようになっています。突端には観覧車もあり、ピアの途中には行楽客のためのアトラクションやレストランもあります。かつては劇場もあったようです。

         このピアは1891年に建設されて100年以上の歴史を誇り、グレアムグリーンの有名な小説『Brighton Rock』の舞台にもなっています。小説は1930年代のこの町の裏社会を素材にしたもので、何度か映画化もされています。題名のブライトン・ロックというのはブライトン名物の千歳飴のような形状の砂糖菓子で、外側はレインボーカラーに塗られていて、これを切ると白い断面にBrightonの文字が出てくるというもので、一種の「金太郎飴」です。これは、ピアや海岸沿いの土産屋で今でも売っています。

      ところで、改めて見てみるとブライトンの街中にはレインボーフラッグを普段から掲げている店も多いことに気づきます。そうした人たち専用の店もありますが、普通の雑貨屋やパブにも掲げられています。町全体が認めている、ということなのでしょう。2010年のパレードの共通テーマは「Pride and No Prejudice(誇りと無偏見)」、ブライトンらしいと思いました。

         ところでレインボーフラッグはほとんどものが赤、橙、黄、緑、青、紫の6色です。日本では、虹は七色といいますが、これは万国共通ではないということですね。そもそも、雨上がりの虹には色の間に境界はありません。色は段階的に変化しているので、七色に見えるのはこちらが七色だと「思い込んで」見ているからですね。ちなみに、上の6色に紺が加わると7色になるようです。

         世の中に男性と女性の二種類しかいなくて、男性と女性がカップルを作るのが当たり前、というのは社会的な「思い込み・偏見」だというのが同性愛者の主張ですから、7色に限らず、6色、5色はたまた8色のレインボーフラッグがあっても良いのでしょう。【2011/6/6】

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satokan
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