イエメン

座右の銘は「100年を青年で生きよう」。中学時代の恩師の卒業アルバムの言葉です。高校生の時に「この世から飢えと戦争をなくしたい」というありがちな大志を抱き、いつまでそんな青臭いこととを言いづけられるだろう、と思っているうちに半世紀近く経ちました。

 大学時代は落ちこぼれの社会学徒でしたが、アジア経済研究所に入り中東のイエメンという国の研究を始めました(1981年)。当時日本でイエメン研究をしている人はほぼゼロだったのですぐに「第一人者」になれたのです。

開発社会学

でも、イエメンだけではあんまり仕事がないので、開発社会学者としての旗を上げました(1991年)。以来30年余り、開発援助の現場を研究フィールドとして、イエメンばかりでなく東南アジア、南アジア、アフリカ、中南米、大洋州の様々な途上国の農村地域で展開されている援助プロジェクトを見聞し、現場で奮闘している日本人や、現地の人々から様々なお話を聞く機会に恵まれてきました。

生活改善・日本の開発

電気や水道などの生活インフラの整っていない世界の途上国の農村を歩き回るうちに、かつての日本の農村もこんな様子だったのだろうかという疑問が強くなり、戦後日本の農村で行われていた生活改善運動の研究に着手しました(2000年)。そのつながりで、現代日本の地域おこし、地域創生にも関心を持っています。

開発とビジネス(フェアトレード・BOPビジネス・ソーシャルビジネス)

開発援助に従事する人は、正義感が強くて困っている人をほおっておけない、熱い志を持った人が多いです。しかし、途上国には利潤を求めるビジネスマインドの人もやってきます。かつて開発とビジネスは水と油の関係でしたが、21世紀になって両者の相互接近が強まっています。援助に近いビジネスとしてのフェアトレード研究(2007年)、より多くの人々を巻き込むBOP(ピラミッドの底辺層)ビジネス研究(2009年)にまで手を広げてしまい「雑食社会学者」になりつつあります(とほほ)。イギリスのサセックス大学開発研究所(IDS)で一年間の客員研究員(2010-11年)を務めて以降は、社会的企業、社会的投資と様々な方法で途上国の社会課題解決に取り組む人々に注目して開発とビジネス分野、特にSDGs(持続可能な開発目標)研究を進めています。