イエメンに関する本を2冊執筆しています。
ご興味のある方は、こちらもご覧になってください。

著 『イエメンものづくし』 アジアを見る眼 2001
著 『イエメン-もうひとつのアラビア』 アジアを見る眼 1994

 古代ローマ時代、ローマ人から「幸福のアラビア」と呼ばれていたアラビア半島南部のイエメン。インド洋を渡ってくるアジアやアフリカの品々を地中海に届けるラクダの隊商路を支配した「シバの女王」はイエメンに都していました。アラビア半島の山岳地に位置するため降雨があり、勤勉な人々は「耕して天に至る」段々畑を維持し、穀物やコーヒーを栽培してきたのです。

 山岳部イエメンの首都、サナアの旧市街は「人類が住み続けている最古の町」とも言われ、石造りの高層建築からなる街並みは世界遺産に指定されています。私は1980年代はじめからイエメン研究を開始し、1985年から88年までと1997年から99年までのつごう5年間サナアに暮らしました。

 残念ながら現在、イエメンは内戦状態にあります。

 2015年の外国軍による空爆開始に端を発するこの内戦状態は「世界最悪の人道危機」と呼ばれているにもかかわらず、先進国の無関心と周辺諸国の利害対立のために和平の兆しは見えていません。子供たちは栄養失調に苦しみ、コロナやコレラなどの伝染病が流行しても保健施設はほとんど機能していません。学校も破壊されて満足に通うことが出来ません。そもそも先生たちは満足に給料を払われていないのです。そんな中でもイエメン人は国内にとどまり(シリア人のようにヨーロッパにたどり着くルートがないのです)、農業をはじめとして日々の暮らしを綱渡りで過ごしています。

 私も2010年以来、10年以上イエメンに足を踏み入れることができず、友人たちに会うこともできていません。一日も早く平和な日が訪れ、子供たちが元気に学校に通えるようになることを祈るばかりです。

イエメン山岳部の結婚式(中央が花婿、その隣に私がいます)