開発は利他的な行為で、ビジネスは利己的な行為。もともとこの二つの活動は別々のベクトルを向いていると考えられていました。しかし、同じ人間の行う活動に利己性と利他性が同居することも不思議ではありません。

 21世紀に入ってから、開発とビジネスの相互接近の流れが強まっています。これをビジネスによる偽善的ポーズ、開発理念の堕落と捉えることもできますが、両者の得意技(開発の公共性、ビジネスの効率性)を活かした、新たな発展支援にすることも不可能ではありません。いわゆるwin-win関係というやつですね。

私は「開発とビジネス」分野の研究にはフェアトレードから着手し(2007年)(成果は『フェアトレードを学ぶ人のために』2010)、ジェトロ(日本貿易振興機構)でBOPビジネスの実務に関わり(2009年)(成果は『アフリカBOPビジネス 』2011)、途上国での様々なビジネス取り組みも見聞させてもらいました。若い人たちのソーシャル・ビジネス(社会起業家)や、クラウドファンディング、社会的投資(ソーシャル・インベストメント)の行方も興味深いと思っています。日本初の社会的投資機関ARUNのメンバーでもあります。

 さらに2016年からは日本の中小企業のSDGs取り組み支援にも関わっており、ジェトロ・JICA共催のSDGsセミナーを各地で開催しています(『SDGs超入門』2019監修) 。また地方自治体の「SDGs未来都市」の動きもにも注目しており、北海道下川町、岩手県陸前高田市、徳島県上勝町、鹿児島県大崎町、沖縄県石垣市などにお邪魔しました。