コンビニからアジアを覗く

出版記念セミナー

今日、アジ研のオンライン講座で「コンビニからアジアを覗く」出版記念セミナーを開催しました。時事ネタではないにもかかわらず、多くの方にご登録いただき、700名以上の方に実際にご視聴頂きました。

本書は、今年の6月30日に刊行されたものですが、2014年に私がこの研究会の構想を思いついてから足掛け七年がかりでした。本書では19人の方にご執筆いただきましたが、その多くはアジ研の研究会(2015-2017年度)、科研費の研究会(2017-2019年)などをご一緒いただいた方々です。

今日は、時間の都合ですべての関係者にご登壇いただくわけにはいかなかったのですが、第1章の遠藤元さん(大東文化大学)、第6章の佐藤幸人さん(アジ研)、第9章の吉田秀美さん(法政大学)、第11・12章の大久保文博さん(長崎県立大学)、コラム8の中村まりさん(アジ研)にそれぞれのエッセンスをお話しいただきました。加えて業界誌である『月刊コンビニ』の元編集長梅澤聡さん、出版元である日本評論社の道中真紀さんにもゲスト出演していただきました。ウェビナーならではの演出ですね。

コンビニと屋台

パネルディスカッションでは、いくつかのトピックについて議論したのですが、そのうちの一つが「コンビニはアジアの屋台を駆逐するのか」というテーマでした。

日本型コンビニは、おにぎりやお弁当などの利益率の高い「中食」(調理済み食品, ready to eat)を「戦略的商品」として位置付けているが、アジアではまだ中食が定着していない、というのが遠藤さんの指摘です。それでも、中国、タイ、マレーシア、ベトナムなどで日系各社は「中食」の開発と販売促進に力を注いでいます。そもそも「中食」がなければ「日本型コンビニ」のビジネスモデルは成り立たないのかもしれません。その意味では「日本型コンビニ」がアジアで成功するかどうかのカギは「中食」が根付くかどうか、ということになるのですが、東南アジアには「屋台」という強敵がいます。

登壇者の皆さんにご意見をうかがったところ、大方の皆さんは「人々は当面コンビニと屋台を使い分けるだろう」「だからしばらくは屋台は駆逐されないのでは」というご意見でした。

考えてみると、日本で進化した「日本型コンビニ」のおにぎりやサンドイッチは、近代化に伴って「屋台」がほぼ絶滅していた日本だからこそ、成功したのかもしれませんね。

【2021/10/6】(コンビニ、開発とビジネス)

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