【ブライトン特急・12】《Mew》

    ブライトンは海辺の町なので、カモメがたくさんいます。サセックス大学は少し内陸に入っているのですが、それでもダウンズの丘を一つ越えれば海なのでやはりたくさんのカモメが飛来します。カモメを示す英語はSeagullがよく使われ、ブライトンの地元フットボールチームの愛称もSeagullsといいます。


    カモメは遠くから見ると優雅ですが、近くで見るとかなりずんぐり体も大きく、顔もあんまりかわいくありません。しかも鳴き声がやかましいのです。サセックス大学開発研究所(IDS)の私のいる部屋は天窓付きの建物なのですが、この頭上をカモメが鳴きながら飛んでいるとかなりの騒音です。カモメを示すもう一つの英語がMewだというのも頷けます。この「ミュー」は猫の鳴き声を示す時にも使いますね。

    ブライトンの町中に住んでいると、夏はかなり早い時間からカモメたちが鳴き始めて、寝ていられないという文句を聞いたことがあります。IDSの学食は天気の良い日には外のベンチで食べることも出来るのですが、時々大胆なカモメが食事をかすめにやってきたりします。こう憎たらしいと、カモメというより海猫と呼んだ方がふさわしい気がします。

    ところで、イギリス英語にはMewと同音異義語で「中庭の厩」という意味があります。そこから転じて「厩を改造した家」「行き止まりの小路」という意味もあるようです。馬の国らしいですね。ロンドンなどの街路表示にも結構Mew(s)があります。

    ご存じの通り欧米の番地(House No.)表示は街路(street,road,avenueなど)に沿って番号がついています。私のアパートはRegencyStreet 57番地で、リージェンシー通りさえ見つけられれば確実にたどり着けますね。教会などのある広場の周囲は「~square」と名付けられ番地はぐるりと一周広場に沿ってつけられます。万事がこのような原則で済めばことは単純で、郵便配達の人にも何の苦労もいりません。
 

    しかし、ロンドンのような古い町では道路から奥まったところに、もともとは中庭だったようなところがあり、そこも人口増加とともに住居に転用されることも多いのでしょう。こういうときには街路と広場だけを基準にした番地付けでは困難です、そこでMews,Court,Yardなどの表示が必要になったのでしょう。
 

    ロンドンの本屋には「London AZ」という地図帳がよく売られています。これは、地図とともに、ロンドン中のすべての街路名がAからZまで順番に列挙されている電話帳のような本で、知らない場所を訪ねていくときには大変重宝します。
   

    有名なロンドンタクシー(cab)の運転手になるには、このロンドン中の街路の名前と場所を覚えていなければならないという説もあります。こちらではタクシーに乗るときには客は普通番地で行き先を告げるからです。確かに、せいぜい数件しかない路地に住んでいて「No.1,~Mews, please.」と言うだけで、確実に届けてくれたらかっこいいですね。
 

    ただ、最近ではカーナビがあるので通りの名前を知らなくても仕事が出来るため「近頃のドライバーの質は落ちた」というベテランドライバーの嘆きを聞いたことがあります。ハイテクが職人技のありがたみを失わせる。これは、日本でも同じですね。【2011/6/1】

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