【ブライトン特急・6】《Graze》

 Graze は「家畜が生えている草を食む」という意味です。サセックス大学は南イングランドのなだらかな丘陵地帯(Downs)の中にあるので、大学の回りは自然公園、牧草地、農村しかありません。夏の天気の良い日に、IDSを抜け出してジョギングをしてみました。 

  大学のある丘の上には、ジムがありその横にはサッカー、陸上競技、テニスコートなどのグランドが広々と展開しています。 グランドの裏から大学の敷地の外に出ると、Falmerの村。すべて農地と牧地です。丘の上から見渡す限りの雄大な斜面が広がっており、あちらこちらに羊が群れて牧草を食べて(Grazing)います。別の一角には馬もいます。ちょっと阿蘇の草千里を彷彿させる光景です。 

 そこから木立の中の山道のようなジョギングコースを少しってしばらく下ると木立が途切れてまた草原丘陵に出ます。木の柵が巡らされ、このあたりの地方自治体であるブライトン・ホーブ(Brighton&Hove)市の看板があって、柵の入り口(stile)に「家畜放牧中」(Stock Grazing)、「入っても良いです」(Access land)と書いてあります。一種の共有地・公有地なのでしょう。 柵の中はは引き続き草原の斜面で、遠くから見るとなだらかとはいえ、丘の登りは結構息が切れます。中では犬を散歩させている人もいれば、馬に乗っている人もいます。牛などの放牧のためでしょうか石の水飲み桶もあります。大きなトレーラーで草刈りしているのは市の仕事でしょうか、丘の上から見ると本当に一面の草原で、だだっ広くて走っていくのがちょっと怖いくらいです。 

  こうやってみると、イギリスは牧畜の国という気がします。現在では羊はほとんど食用で、毛織物の原料はオーストラリアなどから輸入してるらしいですが、牛は至る所で見るし、ロンドンから北や西に走る列車からは豚の放牧を見ることも出来ます。馬もよく見ますが、馬がこんなにいても、使い道はあるのだろうかと思うくらいです。 

  でも騎馬警官も現役だし、王宮関係ではやはり馬は欠かせないようです。2011年4月29日のウィリアム王子の結婚式(Royal Wedding)では、馬車の車列がウェストミンスター寺院からバッキンガム宮殿までパレードをしました。ウェストミンスター寺院はロンドンの我が家のすぐ裏なのでパレードを見に行ったのですが、すでに出遅れて人混みで沿道には近づけませんでした。しかし馬車の前後を走る馬たちが出番を待って列をなして待っているところは見ることが出来ました。非番の時には田舎の牧地で放牧されている、手入れの行き届いた、盛装した馬たちのお尻の波を見ていたのですが、確かに美しかったです。そして、路上にはあちこちに馬糞が湯気を立てていました。 

  不思議なのは、パレードが終わって交通規制が解除されたときには、馬糞はまったく跡形もなかったことです。きっと、馬列の最後から馬糞回収車がついていたのでしょうか。【2011/5/26】

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