迎撃ミサイルの不足
サウジが追加供給をアメリカに依頼?
今日(2021年12月8日)の時事通信の配信記事に、「サウジ、迎撃ミサイル不足か」というのがありました。 サウジ、迎撃ミサイル不足か=米に緊急供給を要請―報道 (msn.com)
サウジはこのところ断続的にイエメンのホーシー派からの弾道ミサイルとドローンの攻撃を受けており、それを高性能の(アメリカ製)パトリオット迎撃ミサイルで撃ち落としています。ホーシー派の装備はそれほど高度なものではなく、サーレハ大統領時代(1987~2011)から貯蔵されていた旧式のミサイルや、おそらくイランの支援で入手したドローンなので、迎撃自体はそれほど難しくないのでしょう。
しかし、それが数か月にわたり、毎週十数発飛んでくるのです。なるほど、そんな手がありましたか。貧乏イエメンが金持ちサウジにボディブローを打ち続ける。その結果、さしものサウジも迎撃ミサイルの備蓄数が危険水準まで低下したとか。報道によれば、アメリカに対してパトリオットミサイルの追加供給を求めているようです。トランプ前政権時代なら、「毎度あり!」と二つ返事で売り込んだでしょうが、バイデン政権は、米軍のパトリオット部隊などの一部戦力を中東から撤収したために防備が手薄になっているとのこと。また、サウジのイエメン空爆に対するアメリカ世論の厳しい目もあります。
貧者の飛び道具
2019年9月に、ホーシー派が撃ったと主張するミサイルとドローンで、ペルシャ湾(アラビア湾)岸のアブカイク製油所の爆撃に成功した時、世界の原油価格が一時的に高騰しました。国家でさえない「反政府勢力」であるホーシー派が、世界一の石油大国の防空体制をくぐり抜けて、「安物」の飛び道具で大きなダメージを与えたのです。技術革新の結果、非国家行為体が国家と同等の軍事力を持つことが可能になったのです。
この爆撃以来、ホーシー派が大きな軍事目的の爆破に成功したことはありませんが、この間ずっとミサイルを撃ち続け、それをサウジは迎撃し続けてきたわけです。資金力に雲泥の差があるとはいえ、安物ドローンに対して高価なパトリオットを撃ちつづければ、さすがのサウジも弾切れになるでしょう。かなりコストパフォーマンスの悪い武器交換だと思います。
COP26なんてどこ吹く風
サウジもSDGs推進への努力を宣言しています。しかし、こうした飛び道具の発射には多くの化石燃料が使われ、またその目的も金属とプラスチックの塊を破壊し、がれきを発生させることです。地球環境に良いことなんて一つもありません。
また、世界で最も大量の石油を消費する機関は米軍で、単一の組織としては世界最大の温室効果ガス排出者だと言われています。世界最大の温室効果ガス排出者は米軍。気候変動報告書では記載なし、情報公開請求で明るみに : BIG ISSUE ONLINE (bigissue-online.jp)
もちろん、国防がすべてに優先するという考え方もあるでしょう。国防とSDGsなんて比較にならないと。そもそもサウジにしてみれば「ホーシー派がロケットを撃ってくるからだ」と弁明するでしょうし、ホーシー派にしてみれば「サウジが空爆を続けるからだ」ということになります。
こんな風に無駄なエネルギーを浪費し、人々の生活をおびえさせる「ドローン対パトリオット」で、利益を得るのはもちろん米国の軍事産業です。つくづく、イエメンの内戦を早くやめさせなくては、と思います。
【2021/12/08 イエメンはどこに行く】
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