ラマダン開始
イスラム世界では、今日から年に一度の断食月(ラマダン)が始まります。これは一ヶ月間毎日、日の出から日没までの間、すべての飲食(水もダメ)を断つという苦行です。その代わり、日没後は普段の月よりもたくさんごちそうを食べるので、この月の食糧消費量は、他の月よりもたいてい多くなります。
それでも、イスラム教徒は「空腹に耐えることで、貧しい人の気持ちを分かち合える」というメリットをよく指摘します。また、ラマダン月は「神聖月」とも呼ばれ、すべての信徒が「良きイスラム教徒」になろうと心がけます。ですから、金持ちは、毎日自宅を開放して日没後の食事(これがそもそものブレイク・ファスト=ブレックファストの語源ですね)を、近所の貧しい人ばかりでなく、訪れるすべての人に振る舞うのです。これは、金持ちの「宗教的義務」です。イスラムではこれも五つの義務のうちの一つ「喜捨(ザカート)」として位置づけているからです。
逆に言うと、これは貧しい人にとっては「権利」でもあります。ですから、夕食にありつけた貧しい人は、振る舞ってくれた金持ちに感謝する必要はないのです。感謝するべきは、金持ちにこの義務を課した「アッラー」です。そして金持ちは、この喜捨をすることで、将来に来たるべき「最後の審判」の日にアッラーから「天国行き」を許されるのです。つまり、貧困者に対して金品を喜捨(贈与)することは、金持ちにしてみれば「天国行き」の対価として位置づけられます。そう、アッラーとの「交換」なのです。
贈与と交換。いろんなバージョンがありますね。
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